営功社

クロージングの失敗|“押す“ことで関係が壊れる瞬間

2025.10.14

育成・研修


営業における最大の山場は「クロージング」です。
「契約を決める」「Yesをもらう」──多くの営業がここをゴールと捉え、力を入れます。

しかし、営功社の50万件の営業音声を分析して分かったのは、クロージングに力を入れるほど失敗しているケースが圧倒的に多いということです。
典型的なシーンがあります。

営業:「本日中にご判断いただけませんか?」
顧客:「うーん、ちょっと社内で検討しますので…」

ここでさらに「ぜひ今決めてください」と畳み掛けると、顧客の声は一気に冷たくなり、関係は壊れてしまいます。
クロージングの失敗は、契約を逃すだけでなく、その後の関係性を閉ざす致命的なズレを生むのです。

1.「押しすぎる」クロージングの共通点

失敗するクロージングにはいくつかのパターンがあります。

期限で追い込む

「今日中に契約いただければ割引できます」
→ 一時的に決断を迫れても、後で後悔や不信感を招く。

決断を顧客任せにしない

「ここで決めないと損しますよ」とプレッシャーをかける。
→ 顧客は“選ばされた“感覚を抱き、長期的な関係は築けない。

自分本位のトーク

「私の数字が今月足りないので…」と、営業側の事情を持ち出す。
→ 顧客にとっては何のメリットもなく、むしろ不快感を与える。

クロージングでの押し売りは、短期的な成果を得られるかもしれませんが、信頼を壊すリスクの方が大きいのです。

2.顧客心理から見た「クロージング」

顧客は、商品やサービスを「買う」のではありません。
自分の意思で「選ぶ」ことに価値を感じるのです。

失敗音声を分析すると、クロージングの場面で顧客が沈黙するケースが多々ありました。
その沈黙の裏側には、「自分の判断を尊重してほしい」という心理が潜んでいます。

逆に、営業が「ご判断は御社のペースで結構です。ただ、今の段階での懸念点を一緒に整理させていただけますか?」と促すと、顧客は安心して疑問を口にし、前向きな検討に進んでいました。
クロージングは押す瞬間ではなく、顧客が自分で“納得“できるよう支援する瞬間なのです。

3.相性とズレの調整

提案フェーズにも「相性」と「ズレ」が存在します。

  • 論理型の顧客には、データや事例を重視した構造で話す必要がある。
  • 直感型の顧客には、まず全体像や未来像を提示してから細部を説明する方が響く。
  • 慎重型の顧客には、他社比較やリスク説明を最初に与えることで安心感を高められる。

営業マンが自分のスタイルだけでクロージングを進めると、顧客との相性はズレてしまいます。
成功するクロージングとは、顧客の意思決定プロセスに歩調を合わせることなのです。

4. 実践ポイント

クロージングで失敗を避けるために、実践できるポイントを整理します。

「決める」ではなく「整理する」スタンスを取る

「最後にご不安な点を整理しましょう」と促すと、顧客は安心して判断できる。

期限ではなく“未来像“で背中を押す

「今導入いただくと、来月からこの課題が解消されます」と未来を描く。

相手の判断を尊重する一言を添える

「もちろん御社のタイミングで結構です。ただ、私から見えるリスクを共有してもよろしいですか?」

沈黙を恐れない

顧客が考えている沈黙を“チャンス“と捉え、待つ姿勢を持つ。

まとめ

クロージングの失敗は、「押し切ること」が目的化してしまうところから生まれます。
顧客は「売られた」と感じた瞬間に心を閉ざしますが、「尊重された」と感じたときに心を開きます
営功社の50万件の中にある失敗音声が教えてくれるのは、クロージングは「Yesを取る作業」ではなく、「納得を支援するプロセス」だということ。
次の商談で、あなたは「契約を迫る」でしょうか?
それとも「顧客の意思を尊重し、背中をそっと押す」でしょうか?

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