営業と教育|「伝える」と「育てる」の境界線
2025.11.13
育成・研修営業とは「伝える仕事」だとよく言われます。
しかし、50万件の営業音声を解析すると、成果を出す営業マンは単に伝えるだけでなく、顧客を“育てている”ことが分かりました。
「伝える」だけでは理解にとどまります。
「育てる」ことによって、顧客は自ら考え、動き、そして決断するようになるのです。
1. 「伝える営業」の限界
例1|スペック説明で終わる営業
営業マンA:「この製品は処理速度が業界最速です」
顧客:「すごいですね」──しかし契約には至らず。
→ 顧客に“情報”は伝わったが、“行動”にはつながらない。
例2|条件比較に終始する営業
営業マンB:「当社は他社よりコストを10%抑えられます」
顧客:「検討してみます」──結果、保留のまま。
→ 「伝えただけ」では顧客は自分ごと化できない。
2. 「育てる営業」が生む成果
例3|考えさせる質問
営業マンC:「もしこの課題を半年後まで放置したら、どんな影響が出ますか?」
顧客:「確かに大きな損失になりますね」
→ 顧客自身が問題を深刻に捉え、導入を前向きに検討。
例4|体験を通じた気づき
営業マンDは試用機を置き、顧客に実際に使わせた。
顧客:「これなら現場が楽になりますね」
→ 自ら気づいた顧客は導入に積極的。
例5|未来を一緒に描く
営業マンE:「導入後、どの部署から成果を出したいですか?」
顧客:「まずは営業部ですね」
→ 顧客が自分で導入シナリオを描き、意思決定が加速。
3. 「伝える」と「育てる」の違い
- 伝える:営業が主体。顧客は情報を受け取るだけ。
- 育てる:顧客が主体。営業は質問・体験・未来設計を通じて顧客を導く。
営業は「先生」ではありません。
しかし「伴走するコーチ」として顧客を“育てる”ことで、結果的に契約が自然に生まれるのです。
4. 相性とズレの観点
- 受け身型の顧客には、「伝える」だけでは動かない。育てることで行動につながる。
- 自立型の顧客には、過度に伝えると煙たがられる。育てる視点で質問を投げると効果的。
顧客タイプに応じて、「伝える」と「育てる」のバランスを変えることが重要です。
5. 実践ポイント
- 1.質問で考えさせる:「どう感じますか?」「どんな影響がありますか?」
- 2.体験を用意する:デモ・試用・シミュレーションを活用する。
- 3.未来像を一緒に描く:導入後のシナリオを顧客と共創する。
- 4.顧客を主役にする:「私が説明する」ではなく「顧客が気づく」構造を作る。
まとめ
営業は「伝える人」ではなく「育てる人」へ。
50万件の音声が教えてくれるのは、顧客自身が“気づき、決める”プロセスを支援することこそが、真の営業成果につながるということです。
次の商談で、あなたは「情報を伝える営業」になりますか?
それとも「顧客を育てる営業」になりますか?